食べることって、誰にとっても身近なことなのに、ときどき難しい。
そんな「食」と「心」にそっと寄り添ってくれる物語が『おいしいはやさしい』という作品でした。
今回は宮田愛萌さんの『おいしいはやさしい』の小説レビューをしていきます。
※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。リンクからご購入いただくと今後のブログ運営の支えになります。読んでくださり、ありがとうございます。
『おいしいはやさしい』ってどんな小説?(作品紹介・あらすじ)
作品紹介

- タイトル:『おいしいはやさしい』
- 著者:宮田愛萌
- 出版社:PHP研究所
- 発売日:2025/9/29
- ジャンル:食べ物小説、連作短編集、ヒューマンドラマ
- ページ数:208ページ
あらすじ(ネタバレなし)
料理が嫌いな新婚女性、過度なダイエットに励む姉がいる受験生、急に思い立ち東京で一人時間を満喫する主婦…。
偏食なオーナーが開いた「カフェ・オヴィ」に食べ物や人生に悩む人が来店し、自分の心と向き合う物語。
誰かの痛みや迷いにそっと寄り添うような、あたたかな連作短編集。
『おいしいはやさしい』感想レビュー(ネタバレあり)
感想レビュー①「食」について深く考えるきっかけに
この作品には各章ごとに「料理が嫌いな人」「ダイエットで何も食べたくない人」「自分が好きな料理を作れない人」「偏食な人」が登場します。
これまで私はいくつかの食べ物小説を読んできましたが「食」自体について、あまりよく考えたことがありませんでした。
私自身、ちょっとした好き嫌いはあるけれど、アレルギーや偏食もなく「食」というのは私の中では空腹を満たす行為だったり自分へのご褒美という認識でした。
しかし、この本を読んで「食」で悩んでいる人も多くいて、食べ物を普通に美味しくいただけるというのは幸せなことなのだと思いました。
私は看護師でアレルギーの怖さについては理解していましたが、恥ずかしながら偏食の方の辛さや生きにくさについては理解できていませんでした。
カフェ・オヴィのメニューは全て食材が明記してあり、偏食の方に対する看護だな、と私は感じます。
偏食の方は自分が作った料理以外は「どんな食材が入っているのか分からない」という不安を抱えて生きています。
その不安を取り除くために全てのメニューの食材を明記するというのは、その人に寄り添う行為で立派な看護だと思います。
小説の中の話ですが、看護師として学ぶものも大きく、今後の自分の看護に生かしたいと思いました。
感想レビュー②登場人物の感情表現がリアルで惹かれる
各章の登場人物の素直な感情が表現してあり、クスッと笑えたり共感できるところもあり、スラスラとテンポ良く読むことができました。
例えば作中に出てくる「めんどくさいし」や「知らんけど」といった言葉が、堅苦しい言葉で表現されるよりも、スッと自分に入ってきて読みやすかったです。
おすすめの読書のおとも
おすすめの読書のおともは作中にも出てくるハーブティーです。
私はハイビスカスの入ったハーブティーが好きなのでそれをおともに読みたいな、と思いました。
こんな人におすすめの一冊
- 食べることに少し苦手意識がある人
- 「食」と「心」のつながりに興味がある人
- 優しい気持ちになれる短編集を探している人
- 人の痛みや悩みに寄り添う物語が好きな人
- 看護や心理など、人に関わる仕事をしている人
食べることがちょっと苦手な人や毎日のご飯を見直したい人も。
『おいしいはやさしい』は心をそっと優しく解きほぐしてくれる作品でした。
ぜひ読んでみてください♪
あわせて読みたい
📖寺地はるなさん『カレーの時間』


